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イントロダクション

「作っちゃおうよコート!」ふたりの少女が巻きおこす、
ピュアでハートフルな物語。

きらきら光る海と山。田んぼと案山子。夏の日本海の島で撮影された本作は、愛好者700万人と言われる日本発祥のスポーツ“ソフトテニス”(軟式テニス)を通じて、主人公の女子中学生と二人を取り巻く人々が心豊かになっていくピュアでハートフルな映画です。
東京から転校してきた亜季役に映画『紙の月』での演技が高い評価を得ている平祐奈、島で育った珠子役に「セブンティーン」の専属モデルとして活躍中の大友花恋が共に初主演でフレッシュな演技を見せています。脇を固めるのは、関めぐみ、小市慢太郎、斉木しげる、草村礼子といった個性的かつ実力派の豪華俳優陣。ソフトテニス競技経験のある星田英利と柳葉敏郎がその実力の片鱗を見せます。
監督は、今をときめく女優たちの主演映画を数多く手がけてきた井上春生。そして主題歌はさだまさしが書き下ろしで楽曲提供。優しい歌声が、さわやかな感動を後押しします。

物語

日本生まれのラケットスポーツ“ソフトテニス”で過疎化した村が生まれ変わる!?

東京から転校してきた小田切亜季と島で育った松丘珠子は、共に中学3年生。亜季は、所属していたソフトテニス部で心に傷を負い、東京での母と姉との生活から離れ、別居中の父・雅也の元へやってきた。
そんなこととは知らない珠子は、亜季にソフトテニスを教えてほしいと持ちかける。珠子の熱意に押され、亜季はまたラケットを握ることにした。

しかし村にテニスコートはなく、二人は廃校の荒れた校庭にコートを作ろうとする。その矢先、村役場が廃校を売りに出す計画が持ち上がった。その担当になった役場の青木は東京で挫折して戻ったUターン組。悶々と過ごすなか、亜季と珠子が一生懸命コートを作ろうとしている姿に打たれ、その噂を聞きつけた、島の“仙人”こと八重婆と共に計画を阻止しようとする。

ある日、練習会に参加した二人は、他の人達との実力の差に愕然とする。練習会に来ていた亜季の父の友人で、ソフトテニス実業団でコーチをしている西園寺馨が、落ち込む二人にアドバイスを送る。
村の人達にも協力してもらいコートが完成し、 青木がコーチを買って出て本格的な練習が始まった。周囲の大人たちに支えられ、亜季・珠ペアは初めての試合に臨んだ―。

出演者

監督紹介

井上春生監督写真

監督:井上春生 Haruo Inoue

1963年1月3日、奈良県生まれ。同志社大学法学部卒。東映京都撮影所で深作欣二監督、降旗康男監督らに師事。その後、『ため息の理由』(05)加藤ローサ、『バードコール』(06)鈴木えみ、『チェリーパイ』(06)北川景子、『東京の嘘』(07)岩田さゆり、『ホワイトメキシコ』(07)ティアラ、『音符と昆布』(08)池脇千鶴・市川由衣、『遠くの空』(10)内山理名など、大胆にモデルを起用したり、演技派の若手女優の魅力を捉える映画を脚本監督。『音符と昆布』は第2回ソウル忠武路国際映画祭正式招待を受ける。一方、コマーシャルでは「資生堂」などコスメ系CFが多くACCやJAA広告コンクールで受賞歴。ジャンルを問わず映像作品数は500本を超える。9.11以降アフガニスタンの映画監督や国立カブール大学芸術学部と協働し『KABUL TRIANGLE』『THE ROOTS』等の合作映画を製作総指揮、カブール国際映画祭、南インド国際映画祭のオープニング上映になる。また3.11大震災に際し、作家・島田雅彦と協同し復興書店のCMや、芥川賞作家・柳美里と南相馬のドキュメントを現在に至るまで継続的に撮り続けている。本作で劇場用映画監督9本目。

本作品への想い

 この映画には空のショットが多い。
 快晴。目の前には16面のコートが広がっていました。たった一日で日本一が決まります。この映画の撮影は、千葉県長生郡白子町で行われたそのハードな高校インターハイから始まりました。これはソフトテニスの映画ではあるけれど、家族、友人、男たち、地域再生、いろんな要素が詰まっています。熱量のある人と人との話しがいっぱい転がっています。それに輪を掛けて、登場しない登場人物も登場します。それは主人公・亜季のお母さんの妙子さんのことです。ここにもこの映画の楽しみかたがあります。この妙子さんはこの映画をご覧になった方ほど亜季のひと夏の一挙手一投足を知りません。中学三年の亜季に自分の生き方を任せているのです。しかし、横にいるよというサインを必要なときだけ出しています。妙子さんのそれは、自分の元を離れた亜季にも、別居した夫にも、その愛情の出し方がシンプルで気持ちいい。詳細は映画を見ていただくとして、平祐奈さん演じる繊細な亜季が心の中で「わたし、なんとかガンバレる」と思うのは、お父さん大好き!という気持ちと、妙子さんに反発しながらもその一方で遠くから愛情をもって見つめてくれているということを肌で感じたからかもしれません。その母親の暖かな眼差しが当人が登場しないのにも関わらず鮮やかに表現できたのは、平祐奈さんが役者である前に人を思いやる優しさと感謝の気持ちを持っていたからだと思うのです。さらにその亜季を翻弄する珠子の誰からも愛されるキャラクターは、大友花恋さん本人の気立てにぴったりはまってしまいました。雑誌セブンティーンのモデルでもある彼女の長い腕と脚は、珠子の成長を待っているようにも見えました。この2人のかわいいそんな「事件」がまずあって、もっとたくさんあって、素振り一万回の見えない努力もあったりして、映画は走り出したのです。
 SNSではシェアというボタンがおそらく今日も世界で何億回もクリックされています。ある日、ネットを検索しているとワンダーというボタンが英国人のクリエイターのサイトにありました。ワンダー、つまり驚きや発見は人に「空想という名の空」を自由に飛べる羽根を与えてくれます。シナリオは亜季と珠子がよくつまずいたりするのですが、驚いたり大切なものを発見していく様をしなやかに行間に忍ばせていたと思いますし、それは島の大人たちにとっても同じでした。なので、この島で起こった物語の先の展開はさらに面白くなっていくと思います。
 最後に。今回撮影が行われた佐渡のロケハンでお世話になった佐渡ソフトテニス連盟の富内正さん。どんな映画になるのか見たいよ、と仰っていた夏の日を思い出します。残念なことに完成目前にご逝去された師の魂にこの映画を捧げます。

監督 井上春生

主題歌

さだまさしさん写真

主題歌:さだまさし「青空背負って」(ユーキャン)

1952年4月10日長崎市生まれ。シンガーソングライター・小説家。'73年に「グレープ」でデビュー。
代表作品は「精霊流し」「無縁坂」。'76年ソロデビュー後も「雨やどり」「秋桜」「関白宣言」「北の国から」など数々の国民的ヒット作品を生む。毎年1枚アルバムを制作し、これまでにオリジナルアルバム42作を発表。活動の中心であるコンサートの回数('76年以降)が2013年7月17日に4,000回に達し、記念公演を日本武道館で開催。同時期に、40周年と4000回を記念してリリースした「天晴〜オールタイム・ベスト〜」が大ヒット。また、2001年「精霊流し」で小説家としての活動を開始。以後「解夏」「風に立つライオン」「ラストレター」など9作の小説を発表。さらに活躍の場を広げている。

あおぞらしょ

「青空背負って」への想い

中学時代、僕はソフトテニスプレーヤーでした。「軟式テニス」と呼ばれていた頃「赤M」は高級品だったっけ。僕は足が速いので後衛、身体が大きい親友のノリちゃんが前衛。毎日毎日自分のサービスと、ノリちゃんのボレーの練習の他、腕立て伏せと反復横跳びと走ることばかりでした。部室の臭かったこと、毎日重くて大きなローラーを転がして一年がかりで校庭の一角にようやく新しいコートを作ったのに、卒業後すぐにそこがプールに変わってしまった切なさなど、様々な思いが蘇り、この映画に共鳴して感動しました。この歌を、一人一人の小さな勇気と自分へのエールを込めて、全てのソフトテニスプレーヤーに捧げます。

制作日誌

目指したのは、スポーツムービーであり、ヒューマンドラマであること。

  • 中学生が約28万人も登録する、日本発祥の球技、ソフトテニス。この数は、日本国内で行われている全てのスポーツ “部活動” の中でも、ダントツの数字だ。だが、これまでマンガやアニメなど、エンターテインメントとして取り上げられるのは、いずれも同じテニスでも硬式の方ばかり。

    しかし、指導者や関係者の情熱は人を動かし、やがて形づくり、作品として成形していく―。

    「ソフトテニスの映画を作りたい」。

    2013年5月。競技団体であるソフトテニス連盟のトップとの会話で出たこの一言から、すべてがはじまった。

    映画作品として成立させるうえで、最大のテーマは、作品の中で、スポーツの持つメンタリティを、エンターテインメントとしてヒューマンドラマに仕上げること、であった。

  • 監督である井上春生は、2012年にWOWOWとベースボール・マガジン社が共同で制作したスポーツドキュメンタリー番組『flowers 〜美しきアスリートたち〜』の制作(撮影・編集)に携わり、スポーツ映像に対するスタイリッシュな切り口と独自の世界観で高い評価を得たことで、自身初のスポーツ題材映画を手掛けることになった。

    井上と歩きはじめた2013年5月、長く独立系邦画でプロデュース(代表作『白痴』手塚眞監督作品)を手掛けてきた古澤敏文と出会う。古澤はかねてから、かつての日本の原風景を舞台とした少女たちの成長の物語を描きたいと考えており、それが本作の主旨と合致した。

    水面下で製作側の体制と人選を地道に進め、ようやく水から顔をあげたのは2014年1月。ストーリーは完全なフィクションで原案の方針が決まり、そこから、準備稿作成、制作プロダクション選定、協賛社募集、オーディション開催と、5月まで濃密な時間を経た。

    本作の要諦を一つあげるなら、主演の2人、平祐奈(16)と大友花恋(15)の抜擢だろう。10代半ばのまばゆいばかりの瑞々しい爽やかな演技は、本作の持つ、滲むような輝きであり、象徴でもある。亜季と珠子という仮想の世界の少女に、彩(いろどり)と生命を吹き込んでくれたことは、2人の才能の賜物であり、それを引き出した井上監督の優れた感性の所以である。

    脚本を準備稿から決定稿に進めるにあたっては、脚本家・村川康敏の登場により、古澤の広げた世界が、より細かく登場人物たちに個性を生み、時にはハートフルに、時にはコミカルに躍動しはじめた。

  • 2014年7月。インターハイからクランクインした本作は、新潟県佐渡ヶ島でのロケを敢行。約1か月の間で、廃校となった小学校の校庭は、見事なソフトテニスコートに生まれ変わり、出演者、制作スタッフ、エキストラも日に日にチームワークが芽生え、東京・杉並の文化学園大学杉並中学校・高等学校にてクランクアップを迎えた。文大杉並では、クランクイン前の約1か月、主演の2人と亜季の姉役・関めぐみのソフトテニス個別指導を行い、本番に臨んだ。

    本物も登場する。柳葉敏郎(西園寺馨役)、星田英利(青木真人役)の2人は、競技としてソフトテニス経験者だけに、本編でのプレーシーンは堂に入る。亜季の父役・小市慢太郎も実は大阪の強豪校で中学、高校と6年間練習に励んだエリート選手であったというのはここだけの話。

    エンディングに挿入した主題歌「青空背負って」は、さだまさしが完全書き下ろしで仕上げた青春讃歌だ。自身も中学時代に競技経験があったことが、歌詞とメロディに生かされている。

  • 物語は子どもたちを中心にして、しかし、大人たちの感情も揺れ動く。リストラされ第二の人生を夢見て島で稲作をはじめた雅也(小市慢太郎)、同じく東京で失敗して島に逃げ帰ってきた青木(星田英利)、過疎化する村の象徴のような村長(斉木しげる)、この男三人を“島の仙人”のような立場で見守る八重婆(草村礼子)。八重は言う。

    「(雅也と青木を指して)二人は同級生だ!都会で、しくじったもん同士、同級生!」

    「村長として『若い人の未来の為に、(村民の皆さんに)どうぞご支援下さい』って、なぜ呼びかけけられん!?」

    くどく大の成人男性に向かって叱咤激励する八重婆をみて、観客が自分の記憶の中の八重婆的な誰かを想起してくれて、その人との温かな記憶を甦らせてくれたなら、われわれは一仕事したと言えるかもしれない。なぜなら、八重婆に込めた思いは、われわれ大人たちがいつもどこかに矜持として持っていたい、そんな遠い昔から受け継がれてきた、この国の先人たちの大事なメッセージなのだから。

    シリーズタイトルにしたcinéathlon(シネアスロン)は、映画(シネマ)と競技(アスロン)を繋いだ造語で、今作品が第1作目となる。

    (プロデューサー・戸島正浩)